エッセイ エッセイのバックナンバー

昨今の風潮では「努力はカッコ悪い!ポジティブでラクして行こう!頑張るからツラくなるんです!」的なことを著名な方が言ったり、書いたりしています。私はなるほど・・・とうなづける点もありますが、何か釈然としない引っ掛かりのようなものがありました。

学校では「天才とは99%の努力と1%の才能です」などと理想論を押し付けます。どんなに努力しても所詮は運しだいだ。大富豪の家に生まれたら努力なしに何でもできるじゃないか。いやいや頑張らなければ何事も成しえないではないか。寝ていてオリンピックに出た選手はいない。頭の中は堂々巡りでした。

しかしこの疑問に明確な答えが出ました。NHKのEテレの経済番組「オイコノミア」(お笑いの又吉さんが番組のナビをしています)で経済学者の方が説明したのです。

マラソンを例にしてみましょう。日本最高タイム1位のAさんと100位のBさんが二人だけでレースに出たとします。99.9999%でAさんが勝つでしょう。ところが順位が2位のCさん、3位のDさん、、、10位のJさんその他100位以内の選手全員でレースに出たとします。そうするとランキング1位のAさんが優勝する確率は20%まで下がるそうです。その理由は当日の体のコンディション、天候、心理状態などが微妙に影響してくるからです。AさんにしてみればBさんだけでなく、99人(少なくともランキング10位までの選手)をライバルに走らなくてはなりません。そしてこの日のレースの優勝者は仮にDさんだったとしましょう。Dさんは「今日は天候が味方をしてくれました。私は暑いのが得意なんですよ」、逆にAさんは「暑いのが苦手で、新しいシューズが合わなくて。おまけに風邪気味でした・・・」と。こうなると実力よりも運が大きく左右してきます。しかしここで重要なことは普段の練習で頑張って10位以内には入っていることなのです。ランキング100位のBさんはどんなに運が強くても優勝はできないでしょう。他の99人全員にアクシデントが起こることは考えられません。結論は「普段の努力(準備)を怠らず、上位のランキングには絶えず入っていて、コンディションを保ち、本番は運を天に任せる」ということではないでしょうか。

私の中でこれがストンと腑に落ちました。スポーツに限らず仕事でも何でもこういうことが言えます。何かを成し遂げる人ほど謙虚で、自分の経験で得たものを後世に残しています。「私は自分ひとりで成し遂げた。できない奴は努力が足りない。自業自得だ」と思わず、「自分も頑張ったけどたくさんの人にも助けてもらった。運も味方してくれた。だから他の人にも還元したい」と思い行動すればますます運気も上がるでしょう。写真に関していえば、何もせずに傑作を撮った写真家はいないと思います。最後の最後は運かもしれませんが、やはり普段の努力(準備)が大事ではないでしょうか。私もそうなるよう心掛けたいと思います。

写真家 野寺治孝
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